
ネバダを代表する大都市ラスベガス—この町は別名“シンシティ(罪の町)”と呼ばれています。ギャンブル・性産業・それらに絡む組織犯罪—人間が持つ影の欲望が生み出した罪に由来する名前ですが、かつては“アトミックシティ(核の町)”と呼ばれていた時代がありました。核兵器もまた人の欲望が生み出した罪だとすると、ラスベガスほど罪深い場所は他に見当たりません。
アメリカントラックシミュレーターで本体同梱されている州のひとつ、ネバダ州を今回はじっくり見ていきたいと思います。
お隣カリフォルニアが金なら、ネバダは”銀”

米墨戦争によって1848年にメキシコから合衆国領となったネバダは、その後1859年に銀鉱脈が発見されたことで発展したことから、“シルバーステート(銀の州)”と呼ばれています。(ちなみにお隣カリフォルニアは”ゴールデンステート”と呼ばれていますが、現在アメリカの金鉱山のほとんどはネバダに存在しています。)銀鉱山で働く大勢の労働者たちが賭博をはじめとした娯楽に興じたことが、後のラスベガスの繁栄につながっていきます。

そもそもネバダは耕作に適した場所がほとんどなく、おまけに年間降水量が平均180mm(日本が平均1,700mm)と全米で最も乾燥した州だったため、外から人やモノを呼び込むことで活気を得る商売:観光業やサービス業が発達していったのは自然な流れでした。
銀採掘もひと段落したネバダでは井戸を掘り真水を確保することでカリフォルニアへと向かう鉄道や馬車に給水し、それに関係する様々な業態がひしめきあう町が点在していました。ラスベガスもそんな給水地点のひとつにすぎませんでしたが、1931年にネバダ州の繁栄を決定づけるふたつの出来事が起きます。
フーバーダムとラスベガス

フーバーダム | 日本の一例 | |
総貯水容量 | 350億㎥ | (日本の全てのダム合計)204億㎥ |
年間発電量 | 2,074MW | (日本の水力発電合計)492MW |
1931年、ネバダ州とアリゾナ州の州境で国家事業“フーバーダム建設”が始まります。これはネバダを中心とした一帯の水源・電力を確保するだけでなく、当時世界恐慌の影響で発生したアメリカ中の失業者を受け入れる場所にもなりました。この際フーバーダムの建設にかかわる大量の労働者に娯楽を提供したのが、ダムの近くに位置し様々なサービス業でにぎわっていた“ラスベガス”でした。

世界恐慌で経済が落ち込む中、この好機を逃すまいと1931年に“ネバダ州でカジノが合法化”されます。こうして荒野の給水地点に過ぎなかったラスベガスは、フーバーダムが生む水と電気という強力なインフラを背景に、ギャンブルやショービジネスを中心とした世界最大のエンターテイメントシティへと発展していきます。
もうひとつの顔”アトミック・シティ(核の町)”

ラスベガスの北西105キロ先には”ネバダ核実験場”が存在します。1951年から94年までの間に928回の核実験が行われたこの場所を、かつてのラスベガスは観光資源として利用していました。”ミス・アトミック・ボム”に選ばれた美女が手招くホテルの最上階には展望室が設けられ、観光客は核爆発が起きると発生する人工地震を感じながら立ち上るキノコ雲を眺めて”アトミックカクテル”を楽しむ—核実験が間近で見られることで集客したい商工会がその当時決めたラスベガスのニックネームが“アトミックシティ(核の町)”でした
そしてこの核実験場に隣接しているのが、かの有名な“エリア51”です。ここでは宇宙人の解剖ステルス戦闘機の研究開発や、敵国ソビエトから鹵獲した戦闘機の性能試験などが行われていたことから非常に広大かつ警備が厳戒だったので、数々の都市伝説が生まれたことはみなさんもご存じかと思います。今でも「これ以上近づいたら撃ちます」と書かれた物々しい看板が林立しています。
ネバダ州でオススメしたいルート

USルート50のネバダ区間は“アメリカで最も孤独な道”と呼ばれています。アメリカ国道の道路番号50という大動脈ルートであるにもかかわらず、ネバダ区間があまりにも殺風景で人気(ひとけ)が無いことからこう呼ばれています。

私の好きな映画「バニシングポイント」の撮影もこの孤独な道路で行われたそうですが、映画の内容的にここまでふさわしい場所は無いだろうと感心しました。こういう場所を走ったとき、「なんて原始的で素敵な道なんだ!」と感じるか、「なんて寂しい荒野なんだ…」と思い詰めてしまうのか、みなさんも実際に走ってみてメンタルチェックをすると良いかもしれません。

ラスベガスの北、ネバダ州道375の上画像青矢印の位置あたりにエリア51の近くに建てられた“特殊なトラックストップ”が存在します。ギャンブルでボロ負けした傷心を癒すべく、ここで“夜間限定”の休憩をとることをオススメします。


暗証番号がルーレットで決定される私の口座がベガスにいっぱいあるんだけど、今日は引き出せなかったな…

すこし夜風にあたりたい…今夜は静かな場所で休憩しよう…


なんだあれ!軍事基地の上空でなにかがピカピカ光ってる!

光がこっちに近づいてくる!誰か助けて!経済的に!


はっ!……夢か……いっそのこと連れ去ってほしかったな…
“荒野のパラダイス”ネバダ州まとめ
シルバーステート | ネバダ州の愛称 “銀の州” |
米墨戦争 | この戦争でネバダはメキシコからアメリカ領となる |
アメリカで最も孤独な道 | USルート50のネバダ区間の愛称 |
リノに行く! | ネバダは離婚手続きがとても簡単。これを言われたら三行半です。 |
フーバーダム | ネバダのみならずカリフォルニアやアリゾナまで支える巨大インフラ |
カジノ合法化 | ラスベガス以外にもカジノタウンが点在する |
シンシティ | ラスベガスの俗称 “罪の町” |
アトミックシティ | ベガスが核実験を観光資源にしていた頃の別名 “核の町” |
エリア51 | 宇宙人が住んでるらしい軍事基地 |
乾燥した土地が大部分を占め、アメリカで最も孤独な道が走るネバダ州。なにもないからこそ、人々は知恵を絞り、殺風景だからこそ、世界一華やかなエンターテイメントシティを作り上げました。アメリカで唯一売春が合法な郡があったり、最近では世界一巨大な大麻ショップがオープンしたりと、ネバダは人が持つ影の欲望をとことん受け入れて成長し続けています。なにもないように見えて、実はアメリカで一番個性的なネバダ州の魅力が皆さんに伝われば幸いです。

今回の記事はここまでです。最後まで読んで頂きありがとうございました。